工業用アルコール実態調査

エネルギー動向調査  ~ 工業用アルコール実態調査  ~

[2010/08/13]    米国及びブラジルでは、工業用アルコールの生産が盛んであり、世界の生産量の約90%を担っている。この2国が台頭した背景には、工業用アルコールの原料となるトウモロコシ(米国)とサトウキビ(ブラジル)の生産が、それぞれ世界一であることが挙げられる。米国では、アイオワ州、イリノイ州など米国中西部でのトウモロコシ生産が多く、工業用アルコールの生産も多い。米国では、トウモロコシを利用した際の生産コストがサトウキビと比較して1/7程度である。

ブラジルでは、1970年代より工業用アルコールの開発と利用が進んでおり、現在では自動車などの一般的な燃料でもある。同国のサトウキビ生産はサンパウロ州が主な生産地域であり、工業用アルコールの生産も同様である。エタノール生産のために、牧草地やジャングルをサトウキビ畑に転化する事例が見られるが、この様な農地開発は自然の生態系に影響をおよぼす可能性があると言われていており、同国におけるエタノール生産の今後が注目される。

他方、中国は、米国ブラジルに続く第3位の生産量まで成長している(2005年、シェア8%)。原料は小麦及びトウモロコシである。しかし、原料コスト、燃料としてのエタノールの市場価格の低さ、生産時のエネルギー消費や生産効率の低さ等の問題があり、政府からの補助金なしには生産が出来ないのが現状である。

一方、EUにおける工業用アルコールの生産では、ドイツフランススペインが約70%を担っており、消費に関してもこの3国にスウェーデンを加えた4国が主である。2006年以降のEU域内における工業用アルコールの生産量と消費量を比較すると、消費が2倍以上増加しており、輸入も5倍以上の増加である。またEUでは、小麦から工業用アルコールを生産しているが、ブラジルでサトウキビから工業用アルコールを生産する場合の2倍以上のコストが掛かっており、その為、他国(特にブラジル)からの輸入を増やす方向へとシフトしており、ブラジルに対する依存度が増す方向にある。

また、その他の国の例としては、インドネシアが挙げられる。インドネシアは石油輸出国として知られていたが、自国での石油消費量の増加や生産量の減少が重なり、2004年には石油の純輸入国へと転換している。このような状況を背景として、国として代替エネルギーとしてのバイオ燃料の供給シェア向上を目標として挙げており、既にサトウキビやキャッサバを原料とした工業用アルコールの生産を増やしている。

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