世界経済不況および日本経済への警鐘
2011年12月12日
株式会社クロスインデックス
代表取締役社長 中村知滋
先進国は今、未曾有の経済不況に入りかけている。
2008年9月のリーマンショックに端を発し、昨年より重債務国のデフォルト危機が本格化し始めたEU諸国。中国にアジアの中枢機能を取って替わられた日本に出口は見えるのか。
下記は筆者の独自の視点により、世界経済動向および日本(特に企業)の直近のあり方を洞察するものであり、有益な読者として想定している事業会社および政府系機関には、危機感の共有および抜本的な対策の検討を呼びかけたい。
米国は、金融手法が先進的に開発され続けているがゆえに、それに乗じてリスクの見えづらい金融派生商品が多数市場に出回り、それに投資した者がババを引き、リーマンショックという形で顕在化した。
結果、米国は、今年の8月22日のデフォルトに陥る10時間前に連邦債務引き上げ法案を成立させ、債務上限を2兆1000億ドル引き上げることでなんとか難を逃れるまでに経常収支は悪化した。ちなみに米国政府の借金総額は14兆3000億ドル。
米国に端を発した金融収縮は欧州にじわじわと忍び寄り、経済成長の源泉がなく、経常収支が悪化し、もはやユーロ加盟要件を満たさなくなった南欧の国々の実態を次々と明るみに出していった。
EUにおいて重責を担うドイツは、欧州金融安定化基金(EFSF)の拡充により、護送船団方式で当該危機を乗り越えようとするが、そもそも財務規律だけを期待され、経済成長の具体的なドライビングフォースの無い南欧諸国には、短期的な延命措置に過ぎない。
欧州と同様にリーマンショックの影響を受けた日本は、2008年においてはGDP成長率マイナス6%を記録し、なんとか翌年よりプラスで推移し始めたところで、今年3月の震災により、ダメ押しを喰らうこととなった。
皮肉なことに、短期的には震災による保険料の支払いで大量に保険会社が円貨を買い戻していることも円高の要因となり、また技術立国に裏付けられた競争力のある中間製品、最終製品の貿易で稼いだ外貨を国内に円貨で還流させる流れは恒常的な円高要因となり、輸出産業は先の見えないトンネルに入った。
今年の通商白書(経済産業省発行)は構造的な不況を読み解く上で参考になる。
日本企業の打ち手として考察すればキリがないため、本論考ではとりあえず、ポイントだけを挙げておきたい。
1.海外生産移管
2.経済成長目覚しい新興国へのマーケティングの強化
3.円高を追い風とした海外企業のM&A
いずれにせよ、今日動こうと思って動ける話ではない。拠点を設立し、まともに稼動し始めるのに最低でも1年、新興国向け市場調査をして機能を削ぎ落とした中間層以上の商品開発を行い、プロモーションを行って成果が出てくるのがどう頑張っても3年、決断が遅れ、海外での足腰を鍛えておかないと、近い将来、米国、南欧重債務国に続き、浮上してくる日本のデフォルト問題にまともに巻き込まれることになる。
以上
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