近年のロシアにおける農畜産業政策等の動向

政策動向調査  ~ 近年のロシアにおける農畜産業政策等の動向  ~

[2010/07/28]    ロシア連邦農業は、ウラル山脈以西の欧州地域、及び南部に位置する黒土地帯が中心であり、ウラル以東のシベリア地区では生産量が低い。

社会主義体制が崩壊した直後の1992年までは、毎年、米国等からの穀物輸入に頼っていたが、その後は経済情勢の悪化に伴う物価高騰によって、畜産物消費の減退が続いた。その為、家畜飼養頭数も大幅に減少し、飼料穀物の需要も大きく低下したことで、穀物生産量は激減した。しかし1998年の経済危機以降においては、ロシアの経済成長に伴い食品産業が活性化し、さらには、大手資本の参入等により、1999年からの生産指標は顕著に好転し、それ以降、畜産を含む農業生産は上向いた。2006年までロシア農業生産は8年連続で前年増となった。2008年6月、世界的な食糧不足を背景に、ロシア政府は、農業生産を拡大し穀物の輸出国として世界に貢献する考えを表明している。

ロシアでは現在、人口の減少で国内の穀物需要は伸びておらず、基本的に、穀物の増産分は輸出に回すことが可能である。実際、2001年以降のロシアは穀物の純輸出国となっており、小麦・ライ麦・大麦・菜種などを年間1,200万トンも輸出している。10年後の輸出高は年間3,000万トンまで倍増し、米国、カナダに次ぐ第3位の穀物輸出国になると予測されている。しかし、2010年に入り、ロシアでは猛暑が続いたため、大規模な干ばつを招き、穀物、特に小麦等の生産が減少しており、既にシカゴやロンドン市場で小麦の価格が上昇している。

ロシアでは一時期、旧ソ連崩壊後に民営化された旧コルホーズにおいて、個人経営者らが農業から撤退したことによって、休耕地が急増した。しかし現在では、国際穀物価格の高騰を背景として、休耕地を再び活用する動きが高まっている。さらには、米国のカーギル社等の外資が参入し効率的な経営が浸透しつつあることから、寡占化が進んでいる。

他方、ロシアにおける牛・豚・鶏肉の生産量は、旧ソ連解体後、激減した。食肉消費量の減少と、低価格の輸入食肉が増大したことが挙げられる。こうした状況下、食肉に対する輸入割当制度が2003年に導入されたが、ロシアではもともと食肉に特化した牛の飼育という習慣が定着していなかったため、現在までさほど効果はない。しかし養豚については近年投資が増えており、また、養鶏は投資期間の短さもあり大手資本が流入し、生産量が増加している。イギリス食肉家畜委員会(MLC)の予測によれば、ロシアでの食肉は生産量、消費量とも順調に拡大するものの、消費量の3分の1は輸入に頼らざるを得ないとみている。

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