ブラジルにおけるイベント効果

ブラジルにおけるイベント効果

[2012/05/07]

ブラジルを代表するスポーツはサッカーであり、ナショナルチームは世界最強との呼び声も高い。このブラジルで、2014年にワールドカップが開催される。現地の熱狂ぶりも容易にイメージできるが、ワールドカップは、オリンピックよりも観客動員数が多く、多大な経済効果も期待できる世界最大のスポーツイベントという側面もある。

2010年~2014年までのワールドカップ・ブラジル大会経済効果については、さまざまな経済分析がある。そのひとつであるジェトゥリオ・バルガス財団(FGV)と会計監査法人アーンスト・アンド・ヤングの共同調査によれば、最終的な需要は296億レアル (約1兆2,839憶円)で、大会開催までの投資が224億6,000万レアル(約1兆2,839憶円)、運営費が11億8,000万レアル(約9,714憶円)、観光客の支出が59億4,000万レアル(約2,569憶円)となっており、ワールドカップに伴う間接的な投資額は1,127億9,000万レアル(約4兆8,782憶円)で、これらを合計すると1,423億9,000レアル(約6兆1,584憶円)の経済効果になるという。さらに、雇用創出効果とこれに伴う所得増加、税収増加などの効果なども含めると、GDPの押し上げ効果は、645億レアル(約2兆7,896憶円)、2010年のGDPの2.17%に相当するという。

セクター別にみると、放送やメディア関係の需要やスタジアム建設、都市再開発、高速道路網や空港の整備などによる建設業の需要増加、観光客の来訪による観光業の収益増大などがある。その他に製造業では薄型テレビなどの需要増加、アパレル関連ではユニフォームのレプリカ売上増加が期待されている。さらには、治安維持のため、セキュリティー関連の業種もワールドカップの恩恵を受けられるという。

中でも注目されるのがインフラ投資である。これまでのブラジルでは電力や流通網など多く のインフラ整備で遅れが目立っていた。ブラジル政府は積極的にインフラ整備を進めてきたが、国土が広いため、電力や物流網、交通網などを整備するのが困難で、資金的な余裕もないことが要因である。そして、このインフラ整備の遅れが経済発展にマイナス効果をもたらしてきた点は否めない。

今回のワールドカップでもブラジルのインフラ整備の遅れは多方面から指摘されている。しかしながら、2014年に開催が決定しているワールドカップに向けて、インフラ整備は待ったなしである。今後の2年間、全力で整備に臨み、国内でのインフラ網が現在よりも充実したものとなれば、これを基盤として経済成長がより一層進むだろう。例えば、道路網、物流網の整備による都市部から地方への配送や商流の活性化と、地方における新たな市場の開拓などがシナリオとして考えられる。

 

インフラの整備された先進国の場合、ワールドカップの経済効果では放映効果、関連グッズ売り上げなどが取りざたされる。また、途上国の場合にも、かつての東京オリンピックのような建設を中心とした特需効果が取りざたされることもある。しかし、ブラジル・ワールドカップの場合には、単なる特需やブームにとどまらず、その後の経済成長の基盤が整備される可能性にも注目すべきであろう。

  

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