ベトナムの長期展望

ベトナムの長期展望

[2012/04/11]

東南アジアのビジネス、経済を見る上では華僑の存在が重要になる。華僑は、人的なネットワークから、中国本国にある資産や資金の流れなど多様な側面で、東南アジアのビジネスに影響を及ぼす重要な存在である。
中国の経済成長は今後も続き、グローバル社会でのプレゼンスはますます増加してくることが予想される。また、中国はアフリカをはじめとする途上国に対して、企業進出やインフラ整備等を国策としてバックアップしている。このように、成長を続ける中国からの資金である「チャイナマネー」は、華僑の在住する国においてキーとなる。

一方、東南アジアの中では、ベトナムでは華僑の影響力は弱い。中国と国境を接し、他の東南アジア諸国よりも中国文化の影響も強いベトナムではあるが、人口に占める華僑の比率が少ない。また、歴史を紐解いてみると、紀元前からベトナムは中国からの侵攻をたびたび受けており、ベトナム人には中国に対する警戒心が根強く残っている。
他方で、軍事拡張を続ける中国は海軍力を強化しており、中国とのつながりの強いアフリカ諸国とのシーレーンを強化する動きも見られる。この際に、ベトナム沖の南シナ海が中国海軍の重要な航路となる。現在でも中国との関係が必ずしも良好ではないベトナムは地政学的な意味合いでもリスクがあるといえる。

ただし、ベトナムを長期的な視点で見た場合にビジネスチャンスが少ないと考えるのは早計である。1990年代以降、ベトナムは順調な経済成長を続けており、外国からの企業進出も目立つ。さらに、輸出も順調に伸びてきており、国民の購買力も着実に高まってきている。また、人口も8,000万人を超えているため、ベトナムを大きな消費市場として捉えることは長期展望の上でも間違っていないだろう。その一方で、コメの生産量も多く、タイに続き世界で第2位の輸出量となっている。

現在は、アジアの成長株として注目を集めているベトナムではあるが、今後は経済の成長鈍化、産業構造の変化などの可能性も否定できない。しかし、その中でも成長を続ける産業分野は存在するであろう。ベトナムへの進出や事業継続を検討する企業の場合、成長が持続する可能性のある産業分野を見極めることがビジネスを成功させる上でより重要になると考えられる。

  

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