地震からの復興とビジネス

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地震からの復興とビジネス

~東北地方太平洋沖地震における被害と復興の将来性に関して~

2011年4月4日
株式会社クロスインデックス

この記事は、東北地方の大地震による惨状を説明し、復興への過程で必要になる不動産やインフラ、エネルギー関連ビジネスの需要に関して、海外メーカーの方に理解して頂くことを目的として取りまとめたものである。

2011年3月11日、宮城、岩手、福島県を中心とする東日本は、日本の太平洋三陸沖を震源として発生したマグニチュード9.0という未曾有の大地震と津波に見舞われた。この東北地方太平洋沖地震による被害は3月28日時点で判明しているだけでも死者1万901人、不明1万7,649人、避難者数は20万人以上(震災直後は43万人)。住宅被害は、福島県は全壊1,108棟、半壊1,164棟、一部半壊17,535棟で合計19,807棟※1  、宮城県は全壊421棟、半壊699棟、一部半壊3,790棟、合計4,910棟※2  、岩手県は合計12,762棟※3 である。家屋被害数はまだ調査中の市町村が半分以上を占めているため、今後益々増加すると思われる。住宅や工場、道路などの被害総額は政府(内閣府)の試算では16兆円~25兆円とされ、その金額には原子力発電所の放射能漏れによる被害などは含まれていないため実際はさらに膨れ上がると予想されている。

1.被災地の現状

この震災による東北周辺の被災地では、現在では未だ復興を開始する段階には至っていない。人命救助に人手を割く時期は過ぎたが、避難所や自宅に住む被災者の食料や水の確保に困難を極めているためだ。今回の震災の特徴としては、避難所の食糧不足が顕著である。津波で交通が寸断され、なかなか被災地に必要な物資が届かず、不自由な思いをしている被災者が多い。燃料不足のため暖房もなく、寒い避難所で毛布に包まり耐えている。

また、長引く避難所生活によりプライバシーを守れず健康を害する高齢被災者も出始めており、食糧不足のため避難所で餓死する幼児もいるという。一刻も早い改善が望まれている中、鉄道及び道路が少しずつ開通しヘリ輸送も行なわれてはいるが、まだ不十分であり、現在のところ完全な輸送には程遠い状態となっている。このように緊急に対応が必要である被災者の生命維持への対策がまだ十分にできていない状況のため、町の復興にはすぐには手が及んでいない。

2.被災地復興の今後

震災による被害の中で、被害を住宅に絞って見てみると、16年前の1995年に阪神地区を襲った阪神淡路大震災の場合は、全壊が10万棟、半壊が14万棟に対し、新築住宅数は震災から3年後の1998年時点までで16万棟※4 。全壊した家はもちろん、半壊の場合でも半数近くは新築する傾向が伺える。

今回の東北地方太平洋沖地震では被害戸数の正確な数字はまだ公表されていないが、被害規模が阪神淡路(9.9兆円≒1,200億ドル、7,800億元)の倍であることから新築住宅数も単純に倍であると考えると、30万棟以上の新築住宅の建築が見込まれる。当然その前には、仮設住宅の建設もある。3月28日、政府は向こう2ヶ月(4月~5月)に仮設住宅3万戸を建設することを発表した ※5 。

阪神淡路大震災と今回の東北地方太平洋沖地震では異なる部分もある。今回の震災では、東京電力福島第1原子力発電所から放射能が漏れ深刻な事態になっている。被爆量は人体にほとんど影響を及ぼさない量とのことであるが、国民の心理に与える影響は数倍も大きく、消費者の購買行動に巨大な変化をもたらし経済に影響を及ぼす。また、東京電力による都市部での計画停電も人口の多い都会での消費を減退させ、今日本は自粛ムードに支配されている。

しかしその反面、復興には将来性がある。阪神淡路との差異の中で一番大きな違いは、阪神淡路大震災から16年間の間に人が環境問題に敏感になり、現在は住宅を建てるに当たりエコが非常に意識されていることである。

このような魅力的な日本のマーケットが、大震災を機に大きくオープンになることが予想されるのである。海外の太陽電池などのメーカーにも、門戸が開かれている。被災地では、復興が始まれば2~3年ほどの間に急激に30万戸以上の住宅を建築する必要があるため、大量の素材を一気に必要とすることになる。日本のメーカーだけでまかないきれる量ではないため、国外のメーカーに頼らざるを得ない状況が生まれると予想される。
エコ関連の需要には下記の例が挙げられる。

  • 自然素材の家
  • 2010年より日本政府によって実施されている住宅エコポイントの効果もあり、住宅を新築する際の素材は「自然素材」が最も好まれる。自然素材とは混じりけの無いもの、木で言えば貼り合わせのないものである。無垢材・自然素材の使用により、夏はエアコンでの冷房を極力少なく出来る。外壁は建物の外側をすっぽりと断熱材で覆い、窓は断熱シートを用いて外気を遮断するだけでなく結露や隙間風を防ぐ。そして装備は、オール電化、保温材による浴槽、ソーラーハウス(太陽熱を利用した24時間暖房)など、徹底的にエコロジーを意識した住宅が非常に好まれている。

  • 高効率給湯器
  • 日本では給湯は暖房以上に電気消費量が多く、家庭用のエネルギー消費のうち暖房の25.3%に対して給湯は34.3%であり※6 、給湯器にエコ商品を使用することへの関心は高い。近年は空気の熱でお湯を沸かす高効率給湯器が好まれている。気体の圧縮熱を利用してお湯を沸かす仕組みであり、燃焼しないため排気が無くクリーンである。従来の都市ガスを使用する場合と比較して給湯費が4分の1程度に抑えられる他、CO2排出量も3分の2ほどに抑えられるため、日本の消費者のエコ気分を満足させられる。そして、自らを満足させてくれるものにはお金を惜しまないのが日本人である。

  • 自家発電
  • 現在東北、関東では電力供給が不安定であることから、自家発電が非常に注目されると思われる。自家発電で主なものは太陽光発電、風力発電である。太陽光や風力を使用するメリットは、枯渇しない・どこでも利用可能・ランニングコストが掛からない・大気汚染の心配がない等、電力不足の地域には最も相応しいものである。現在京セラやシャープ等のメーカーが発売している太陽電池パネルは1kWあたり60~70万円であり、平均的サイズは3.5kWであるため少々価格が高めであるが、補助金制度があり※7 最大100万円近くの補助金を受けることも可能である。

  • 蓄電池
  • この震災と電力不足を契機として、家庭用蓄電池の設置が一般的になる可能性がある。蓄電地とは、基本的には夜間の割安な電気を利用して充電を行うことにより蓄電し、繰り返し使用することが出来る電池である。太陽光発電と蓄電池を組み合わせることにより、現在東日本で問題となっている電力不足の解決が可能になる。すでに蓄電式暖房機(割安な深夜電力を溜めて日中に放熱する)は一般に売り出されている。家庭用蓄電池は価格が高価であったため普及は数年後と見られていたが、昨今の電力不足により普及が加速することが見込まれる。

  • 風力発電
  • 東北地方には土地が豊潤なこともあり、地震からの復興の過程で企業が風力発電のための風車を設置するニーズが増加すると考えられる。風力発電は、風力エネルギーの約40%を電気エネルギーに変換できる極めて効率の良い発電方法である。風車設置には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と資源エネルギー庁により、事業者の資金の借り入れ保証、経費の一部補助を行っている※8 ことも風車設置の誘因となる。また、一般家庭でも屋根に設置することにより風力発電を行う機器の市販が始まっており、関心が寄せられている。

  • 二酸化炭素を出さない街
  • 震災後の復興計画には、アラブ首長国連邦の首都、アブダビにあるマスダールシティのような都市にするという提案もある※9 。マスダールシティとは、「二酸化炭素を出さない都市」、「自ら発電する都市」と言われる都市計画である。風力、太陽光、地熱、スマートグリッド、電気自動車、壁面緑化、施設園芸等の代替エネルギー、緑化、農業生産等の各要素技術を世界中から結集し、二酸化炭素を出さないサステイナブルな街を作る。そして、それら要素技術ではなく、都市そのものを、世界のモデル都市として世界に売っていくプロジェクトである。この提案の様に、東北地方の復興に当たって以前の街や住宅を再現するのではなく、エコロジーな街に再構築する計画を良しとする意見は多い。

  • 電気自動車
  • 復興過程では家を新築するのみでなく、当然車も購入する。東北地方などでは公共交通機関が発達しておらず、自家用車は一人1台必要であるためである。これから売れるのは従来のガソリン型の車に加えて電気自動車である。電気自動車であれば、震災後東北地方で重要な問題のひとつであるガソリン不足も解決できる。電気自動車は非常に環境に優しいのみでなく音が静かという長所もある。注目されている割に普及は進んでいなかったが、近年特に技術が進み、加速の良さ、充電時間の短縮などにより使い勝手が上昇しているため、この震災を機に東北地方では電気自動車が普及する可能性がある。

以上

地震から復興する日本とエネルギー関連のビジネスに関心のある海外メーカーの方は、
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