2020年の国際ビジネスの概況および影響を与えるトピックス

2020年の国際ビジネスの概況および影響を与えるトピックス

【2020年 国際政治・経済・ビジネス概況】
2020年の世界経済成長率は3.4%(前年比+0.4pt)と持ち直しが見込まれている。
ただし内訳としては先進国は1.7%と前年比同で留まり、新興国や発展途上国が4.6%
(前年比+0.7pt)と回復へのインパクトを与えている。
ちなみに日本は0.5%(前年比-0.4pt)と、減速が見込まれている(IMF2019/10)。
 
2020年の米国大統領選挙を見据えたトランプ氏の戦術的な対外柔和姿勢が
貿易摩擦を緩和し、一時的な世界経済回復に寄与するであろうが、中期的には
予断を許さない状況が続いている。
 

ミクロ経済環境においては、日本国内においては今春キャリア各社がリリースを
予定している5G関連サービスが、特に生活や業務シーンへの新たなスタイルを
提案するものとして期待されているが、本格稼働には付帯インフラや機器の整備が
待たれる。

 

また日本では、昨年半ば頃から「働き方改革」の影響が企業活動に顕著に出るように
なり、その影響は以下のように考察される。

 

企業側:
・関連法制度整備を受けた企業内の兼業・副業規定の緩和により一企業への社員の
コミットメント(労働時間やモチベーション、責任感)が低下し、また人材(知見)
の流出リスクが高まる中、社員一人あたりへの期待値を落とし、新任や欠員時の
臨時担当でもスムーズに業務に入れるための仕組み構築(マニュアル整備、システム
支援)や知見蓄積の仕組み構築が急務に
・BtoB間でも、昨今のコンビニエンスストアのFC本部と加盟店側のせめぎあいに
見られるような営業時間の短縮などの契約条件緩和検討が必要に
・一人当たりの労働時間が減る中、ここ10年継続する有効求人倍率上昇傾向下での
補充人材の確保が難航

 

働く側:
・一企業からの給与が抑制方向に働く中、兼業、副業への意識上昇
・制限された時間の中でアウトプットを期待されストレスが増加する労務環境
・収入低下に伴う消費意欲減退

 

総じて、雇用される側の、特にノイジーマイノリティの一方的な権利主張や風評が、
企業としての対策が後手に回りがちなSNS等を通じて流布されるようになる中、過剰に
反応した世論を受けて、雇用される側を過剰に保護する方向に政策の舵が切られ、
社会整備が進んでいる。
優良企業もブラックのレッテルを貼られ始め、ブランド維持のための顧客に専心した
ハードドライブがしづらくなり、上場企業を始めとする付加価値を先頭に立って生み
出すべき優良企業の成長スピードにブレーキがかかり、国際競争力においても大きく
遅れをとる原因ともなり、企業価値が毀損する方向に進んでいる。
一方、兼業・副業により概してアーリーマジョリティ以降の次点企業に人手がシフトし、
企業価値のフラット化が進み、日本経済はより創造性を失う方向へと進む。
社会の風潮とは距離を置いた、社会人一人一人の就業、企業貢献、社会貢献、自己成長
への高い意識が求められている。

 

-トピックス-
ネガティブな労働環境になりつつある中、2020年の個々のトピックスとしては、前年から
一転し、下記の通り、主たるマイナスインパクト4点に対しプラスインパクトは10点と、
経済がドライブされる明るい兆しが多く見られる。

 

■プラスインパクト
・5G展開に伴ったIoT時代の新サービス開始(2020年春)
・米大統領選挙(2020年11月)を意識したトランプ氏の柔和姿勢による世界経済の持直し
・東京オリンピックに伴った関連インフラや宿泊施設の充実、訪日外客による消費需要(2020年7-9月)
・働き方改革に伴う業務効率化の機器・システム投資
・小学校でのプログラミング教育必修化に伴う関連サービス・機器の開発(2020年4月)
・ドローンからスカイドライブ(有人飛行)へ
・AIのさらなる進化と各産業への根付き
・SDGsからの脱プラスチック産業の台頭
・ふるさと納税制度に伴った地域商品・サービス開発競争による地域活性効果
・クラウドファンディング×SNSを始めとした投資手段の多様化と敷居の低下により、
より有望な経済活動に資金が回るように

 

■マイナスインパクト
・米中貿易摩擦の継続懸念
・香港・中国問題および、その香港を取り巻く経済活動への打撃
・ブレグジットによるイギリス経済の凋落懸念(2020年1月)
・働き方改革の弊害(具体は上述)

 

2020年1月1日 代表取締役/エグゼクティブコンサルタント 中村知滋


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