クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート 第51弾 – タイ 2011年8月16日

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クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート
第51弾 – タイ 2011年8月16日

新興国19カ国レポートについて

本レポートは、海外調査や海外進出、海外出張などを検討しておられる企業様や、海外の政策や法律動向を見ておられる官公庁様、さらには学校法人様、現地事情にご関心のある個人の方に向けて執筆しております。

BRICsNEXT11VISTAなどのキーワードで取り上げられ、注目されている新興国のうち、インドネシア、中国、マレーシア、メキシコ、タイ、バングラデッシュ、南アフリカ、ロシア、ブラジル、ベトナム、韓国、フィリピンの19カ国を対象に、クロスインデックスの現地調査員の情報提供の下に配信してまいります。また、今後、アルゼンチン、UAE、エジプト、トルコ、インド、パキスタン、ナイジェリア、イランなどの国々を追加していく予定です。

代表取締役社長 中村知滋

タイの政治情勢と観光業への影響

空港閉鎖

タイ観光業が苦境にあえいでいる。タイの政情不安については日本などで大きく報道されていたが、決定打となったのは、2008年12月の空港閉鎖だろう。

これは、タクシン元首相派の政権に反対する民主主義市民連合(PAD)のデモ隊数千人が首都バンコクスワンナプーム国際空港ドンムアン空港スワンナプーム国際空港開港前は国際空港だったが、現在は国際線の一部に使われている)を約1週間占拠した事件で、この間、バンコクの空の交通は完全に麻痺した。

この事は、日本のマスコミでも大きく報道され、タイ空港に取り残された人々の様子や、バンコクから車で約3時間のバタヤのウタパオ空港を利用した臨時便を利用して帰国する人々の様子がセンセーショナルに報道された(とはいえ、タイ政府は、空港閉鎖の影響で本国に帰国できなくなった外国人旅行者に対して、1日当たり2,000バーツの補助金を支給しており、急いで帰国する必要の無い旅行客の中には空港閉鎖を喜んでいる人々もいたようである)。

これによるタイのイメージ悪化と観光客の減少は著しく、2008年12月末には、「タイ国政府観光庁は2008年12月-2009年4月の期間に観光客数が230万人減少し、観光産業に860-1,300億バーツの損害が発生する」との見通しを発表すると共に、翌年の年間観光客数を1,600万人から1,400万人に下方修正した。

特に、安全志向の日本人観光客への影響は大きく、日本の大手旅行代理店7社のタイへの募集型企画旅行(いわゆるパッケージツアー)によるツアー客は10月が前年同月比49.8%減、11月57.6%減、12月66.6%減となり、1月61.3%減、2月58.5%減、3月64.5%減となっている。タイでは観光業は、DPの5%強、就業者数の6~7%を占める重要な産業であり、他の産業に対する波及効果も大きい産業である。

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観光ビザの無料化

2009年のタイの民主党政権は、PADや軍との関係が良好であると言われている。そのため、PADによる再度の空港閉鎖は考えにくいほか、タクシン派が空港閉鎖を行おうとすれば、軍が介入して排除することが予想されるため、空港閉鎖が今後も起きる可能性は低いだろう。

タイ政府は3月、観光客減少に歯止めをかけるための対策として、従来は35米ドルの発行手数料が必要だった観光ビザ無料化を6月まで実施することになった。とはいえ、タイは、先進国のパスポート保有者に対しては、空路で入国すれば30日間の滞在許可を与えていることから考えると、観光ビザを取得する必要のあるのは節約型のバックパッカーや、不法就労者を含めた長期滞在者に限られることになり、景気刺激のための効果は薄いだろう。

観光客を取り戻すためには、政情不安に対する懸念をいかに早く払拭できるかが鍵となるだろう。

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