クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート 第8弾 – バングラデッシュ 2009年3月11日

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クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート
第8弾 – バングラデッシュ 2009年3月11日

新興国19カ国レポートについて

本レポートは、海外調査や海外進出、海外出張などを検討しておられる企業様や、海外の政策や法律動向を見ておられる官公庁様、さらには学校法人様、現地事情にご関心のある個人の方に向けて執筆しております。

BRICsNEXT11VISTAなどのキーワードで取り上げられ、注目されている新興国のうち、インドネシア、中国、マレーシア、メキシコ、タイ、バングラデッシュ、南アフリカ、ロシア、ブラジル、ベトナム、韓国、フィリピンの19カ国を対象に、クロスインデックスの現地調査員の情報提供の下に配信してまいります。また、今後、アルゼンチン、UAE、エジプト、トルコ、インド、パキスタン、ナイジェリア、イランなどの国々を追加していく予定です。

掲載頻度としては、半月に一回、19カ国分のレポートの順次掲載を予定しております。国際ビジネスを展開される皆様のヒントになれば幸いです。

代表取締役社長 中村知滋

バングラデッシュで普及の目覚しい携帯電話

低迷するバングラデッシュの固定電話市場

バングラデッシュでは一般家庭の固定電話はあまり普及しておらず、今でも町の至る所に「Tel & Fax」という看板を見かける。いわゆる電話屋さんだ。バングラデッシュの首都であるダッカ市内なら一回の通話料金は5タカ(約7円、1タカ=1.5円換算)から、また、日本に便せん1枚のFAXを送ると100タカ(約150円)の料金が掛かる。ちなみに、バングラデッシュの 国内郵便は2タカ(約3円)、高級ファーストフードのランチが約200タカ(約300円)、屋台のお茶屋のミルクティーが一杯5タカ(約7.5円)程度で あり、電話・FAXサービスの通信費は決して安いものではない。固定電話の普及に時間が掛かっているのは、回線の絶対数が少ないという事情もあるが、むし ろ日本のNTTにあたるBTC(Bangladesh Telecom Co.Ltd.)に問題があると言われてい る。例えば、申し込みをしてもすぐに対応してくれない。おまけに、取り付け工事には多額の袖の下と有力者の口利きが必要になってくる。それでも、数ヶ月は 掛かるのが現状である。2001年には、固定電話の普及に日本の資本が一役買うというニュースが話題となったが、結局は今でもあまり改善されていない。そ れ故に、固定電話の設置数が一番多いダッカ市内でも、登録番号は未だに7桁までしかない(他方、携帯電話は11桁)。

バングラデッシュ
携帯電話販売店の看板広告。プリペイド式携帯電話のチャージを行うことが出来る。上の広告はバングラリンク社(Banglalink)、下はアクテル社(Aktel)

携帯電話サービスの走り

他方、バングラデッシュにおける携帯電話サービスは、1992年からスタートしている。もっとも、当時の携帯電話マーケットは実質的にシティセル社(Citycell)一社の独占状態にあり、また、当時の契約料2,500ドルを払える個人は稀で、利用者は外交官や商用で滞在する外国人、また、一部の富裕層に限られていた。(通信手段が他にないのでやむを得ず、設置に時間の掛かる固定電話よりも携帯電話を利用する人が多かったようだ。) ちなみに、バングラデッシュ携帯電話会社の第一号であるシティセル社(Citycell)のオーナーは日本に留学していたこともあり、日産自動車の正規ディーラーを経験し、最終的には国会議員、外務大臣にまで上り詰めた人物である。

バングラデッシュ
ダッカ市内携帯電話販売店バングラデッシュでは相乗的な集客効果を上げるために、同業者が何件も同じ場所に集中していることが多い。

携帯電話会社のランキングと料金

その後、1997年にはシティセル社(Citycell)の独占販売権が期限切れを迎えたこともあり、ダッカ市外で限定使用できるグラミンフォン社(Grameenphone。“田舎の電話”という意味。ノルウェー資本)など、低価格の携帯電話を提供する企業が設立され、バングラデッシュにおいて携帯電話が本格的に普及し始めた。一般的な携帯電話の使用は、SIMカードとよばれるチップを各携帯電話会社の営業所で購入し、携帯電話端末を取り扱う電器屋等で購入した電話端末にセットする。携帯電話端末本体の価格は、一台1,500タカ(約2,250円)程度の中国製から、カメラ付きの数万タカの携帯電話端末まで、個人の予算にあった電話端末を選べるし、また、中古も勿論出回っている。SIMカードはプリペイド方式の携帯電話なら300タカ(約450円)から購入でき、自宅に毎月請求書が送られてくる方式なら500~600タカ(約750~900円)の料金が掛かる。バングラデッシュでは郵便事情が非常に悪いため、請求書が届かなかった場合、支払期限が分からず電話を止められるのはよくある話である(銀行引き落としのシステムはまだ整備されていない)。プリペイド方式の携帯電話は、料金が少なくなると電話を発信する時にお知らせが入るので、各電話会社と提携した取扱店で20タカ程度から好きなだけチャージできる。このような手軽さから、プリペイド方式の携帯電話は若い世代を中心に人気がある。 いずれの場合も、携帯電話の不正利用防止を目的として、2008年からは購入する際に身分証明書や顔写真、指紋押捺などが義務付けられ、それ以前からの携帯電話使用者も、各利用会社に再登録を行うこととなった。期限内に再登録を行っていない携帯電話は使用不能となるケースも出てきているものの、このような煩雑な手続きにも関わらず、バングラデッシュにおける携帯電話の普及の勢いは増す一方である。その主な理由は、携帯電話会社の競争により通話料金が安くなったことが大きいであろう。通常は1回の通話で料金が2タカ掛かるのが、最近では90パイサ(1タカ=100パイサ、約1.35円)といった通話料もあり、また、夜の12時から朝6時まで同じ会社の携帯電話同士なら通話無料になるサービスも見かけるようになった。

現在のバングラデッシュでは合計6社の携帯電話会社が販売競争を繰り広げており、先述のグラミンフォン社(Grameenphone)がトップシェア(約33%)を有している。シェア第2位はバングラリンク社(Banglalink)という中東資本の会社で、バングラデッシュ携帯電話市場の25%を占めている。ちなみに、この2社はバングラデッシュの高学歴(大学院以上)の若者の中で、最も入社したい憧れの会社になっている。それもその筈、両社ではバングラデッシュ国内では桁違いの高収入が保証されているからだ (大学卒業の月給が12,000タカ(18,000円)程度のバングラデッシュで最低でも3倍は保証されているそうだ) 。続いて、2008年に、NTTドコモが株式の30%を取得したアクテル社(Aktel)が第3位となっている。このNTTドコモの参入は、バングラデッシュ国内の新聞にも大きく紹介され、日系資本が入ったことで経営が安定するであろうとの期待感からアクテル社(Aktel)の株価は上昇した。その他の企業では、かつての独占企業であったシティセル社(Citycell)、約3年前に格安通話料金を武器に参入したワリッド社(WARID)、また、国営企業のテレトーク社(TeleTalk)などがあるが、4位以下はドングリの背比べ、と言ったところであろう。

徐々に広がる携帯電話マーケット

このように多数の企業が携帯電話市場に参入したことによって、バングラデッシュでも携帯電話は手軽に購入できるアイテムに育ち、中流階級以上に限れば高校生以上には一人1台の割合で普及している。その需要が予想外に急上昇した為か、携帯電話番号の桁数が近年2度に渡って増えている(現在の携帯電話番号は11桁)。しかしながらバングラデッシュでは識字率が約38%とまだまだ低く、その為、携帯電話の使用は、通話と、せいぜい若者同士でのメール(SMS)のやりとりに止まり、ネットや音楽の配信を楽しむにはまだ至っていない。貧富の差が激しいバングラデッシュでは、大卒の会社員の平均月給が約12,000タカ程度(約18,000円)と言われている。この金額で生活をしていくのは、実際は厳しいが、殆どのバングラデッシュ国民(総人口約1億3千万人)が大家族制度の中で暮らしており、その為、生活を辛うじて維持できている。携帯電話の利用者層は、人口の約40%を占める中流階級以上に加えて、残る60%のうち30%以上で、全人口の約18%と言われている。この数字は、テレビや冷蔵庫がない家庭にも携帯電話が利用されていることを意味する。生活必需品として、また、娯楽の一環として携帯電話の利用方法はこれから益々拡大していくと考えられ、非常に楽しみな市場である。

バングラデッシュ
ダッカ市内の携帯電話販売店その2

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