クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート 第18弾 – ロシア 2009年4月22日

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クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート
第18弾 – ロシア 2009年4月22日

新興国19カ国レポートについて

本レポートは、海外調査や海外進出、海外出張などを検討しておられる企業様や、海外の政策や法律動向を見ておられる官公庁様、さらには学校法人様、現地事情にご関心のある個人の方に向けて執筆しております。

BRICsNEXT11VISTAなどのキーワードで取り上げられ、注目されている新興国のうち、インドネシア、中国、マレーシア、メキシコ、タイ、バングラデッシュ、南アフリカ、ロシア、ブラジル、ベトナム、韓国、フィリピンの19カ国を対象に、クロスインデックスの現地調査員の情報提供の下に配信してまいります。また、今後、アルゼンチン、UAE、エジプト、トルコ、インド、パキスタン、ナイジェリア、イランなどの国々を追加していく予定です。

掲載頻度としては、半月に一回、19カ国分のレポートの順次掲載を予定しております。国際ビジネスを展開される皆様のヒントになれば幸いです。

代表取締役社長 中村知滋

日本車など外国勢が席巻するロシア自動車市場

サンクトペテルブルクに集中する自動車工場

北の首都と呼ばれるロシアRussian Federation)第2の都市、サンクトペテルブルクSaint Petersburg、旧レニングラード)は、ロシア総人口の3.2%にあたる457万人(2007年)が集まる大都市である(ちなみにモスクワは1047万人)。

サンクトペテルブルクは、日本のトヨタ自動車や日産自動車を始めとする外国製自動車メーカーの工場建設が集中しているという点で、近年特に注目されいる。2013年にはサンクトペテルブルクに進出する外国製自動車生産工場の数は15社になると見込まれている。

ロシアでは、国内における外国メーカーの自動車工場の増加に伴い、2007年におけるロシア輸入総額の51%を自動車および関連部品が占めている。

このような状況を受けてロシアの自動車生産工場は、アメリカのビッグ・スリーのひとつゼネラル・モーターズ社(GM社)と提携したアフト・ヴァズ(Avtovaz)のように、外国資本との提携を積極的に進め、生き残りを図っている。ちなみに、少量ではあるがロシアから日本へ輸出されるロシア国産車もあり、日本でも購買可能である。

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外国製自動車の多いモスクワ中心部
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消えゆくロシア国産車

ロシア人が抱く外国製自動車への強い憧れ

ロシアの自動車市場は、ロシアの国内経済成長、消費ブームを象徴する市場の1つである。ロシアにおける自動車保有率は他の先進諸国に比べるといまだ高い水準にあると言えないが、2006年末の統計によるとロシア人総世帯の35%が自家用車を所有しているとのことだ。これは、1995年末の18%と比較すると約2倍に上昇している。

これを、2006年時点のロシア総人口1億4,275万人から推計すると、この11年間で2427万人分のロシア人世帯が新たに車を購入し、2006年末には4996万人分の世帯が車を保有していたということになる。

ロシア国内の経済発展によりロシアの主要都市(モスクワサンクトペテルブルクなど)では郊外への宅地拡大が続いているが、ロシア国内ではこのような経済発展・社会変化に公共交通機関などのインフラの整備が追いついていない。また、ロシアでは公共交通機関の利用が非常に不便な地域もあるため、自家用車の新規購入需要は依然として高い。ロシアでは特に外国製自動車の人気は高く、2002年には外国製自動車の割合は、ロシア国内の総自動車保有台数の約4分の1に過ぎなかったが、2007年には約4分の3にまで急増し、ロシア人消費者の外国製自動車志向は強くなる一方である。

例えば、現在のモスクワ市内の道路では外国製自動車が多く見られる。これは、以前はロシアの国産車を保有していた人々も、買い替えの際には外国製自動車に乗り換える傾向にあるからだ。かつてはロシア人富裕層だけの特別なものであった外国製自動車が、今ではロシア人中流階級にまで購入意欲が広がっていると言える。

それらの影響を受け、ロシアの国産車需要は落ち込みが大きく、2008年末に小型自動車オカ(Oka)が生産を打ち切るなど、苦境に立たされている。オカはロシア車には珍しい小型車で、しかも障害者向けの特別モデルも揃えているなどロシアでは貴重な車種であったが、オカを生産していたセルプホフスキー自動車工場は2009年1月に、外国製自動車の生産に経営資本を集中するとの方針転換を発表した。

ロシア自動車市場における日本車の地位

欧州ビジネス協会The Association of European Businesses: AEB)によると、2008年のロシアの外国製自動車市場は、前年(2007年)の伸び率61%には及ばないものの、最近の経済不況にも関わらず通年で見れば26%の伸びを見せている。

ロシア国内の 外国製自動車の新車販売台数は2008年において209万台であり、販売台数のトップはアメリカのシボレー(Chevrolet)で23万5千台、続いて 韓国のヒュンダイ(Hyundai)が19万3千台、 3位のトヨタは19万台、そして、5位に日産が14万7千台と続いている。三菱は6位、ホンダは10位、マツダ、スズキ、スバルも20位以内と、上位20 位に日本の自動車メーカー7社が入っており、ロシアの外国製自動車販売市場における日本車のシェアは高い。

また、2008年のロシア国内におけるシボレーの新車販売台数は2007年が24%の増加であるのに対して、日本の自動車メーカーは、トヨタが31%、日産26%、ホンダ131%、マツダ45%、スズキ34%、スバル40%と、軒並みロシア国内での販売台数を大きく伸ばしている(三菱自動車を除く)。

ロシア自動車市場の2009年販売予測

ロシア自動車市場は、昨今の不況の煽りを受けて2008年後半に低価格車と高級車がマイナス成長(販売台数)に陥っている。

また、AEBによれば、2009年のロシアの外国製自動車販売市場は全体でマイナス19%が予想されており、ワーストケースでマイナス30~50%との予想で、世界的な経済不況の影響は避けられないとの見通しが強い。

しかしながら、ロシア人消費者の自動車購入意欲は依然として旺盛であり、ロシア国内においての外国製自動車の生産は今後も伸びる可能性があると、AEBは見ている。

また、ある現地調査会社の報告によると、2009年のロシアの自動車販売台数は25%減の約230万台、あるいは、50%減の160万台にまで落ち込むと予測されている。しかし、ロシアの自動車販売台数の減少率は他国に比べ緩やかであるとされている。同調査会社によると、ロシアにおける自動車市場は2006年水準にまで下がると予想されているのに対し、他国では10-20年前の水準にまで下がる可能性があると言及されている。

総じて、現在は世界的な経済不況下にはあるが、ロシア自動車市場が依然として有望な市場であることには変わりはない。ロシア国内の外国製自動車購入率の高まりを鑑みれば、ロシア自動車市場全体に占める外国製自動車のシェアは引き続き増加傾向にあると言えよう。

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モスクワ市中心部の繁華街。
歩道の一部が駐車場になっているが、
やはり外国製自動車が目立つ。

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モスクワ市内に見かけられる日本車

やはり外国製自動車、できれば日本車

ロシア経済紙 RBK紙が2009年1月22日から23日にかけてネットで行った「外国製自動車の購入に関するアンケート調査」によると、今後、ロシアへ輸入される外国製自動車については、購入関税率引上げによって購入価格がさらに上昇するであろうが、調査に回答したロシア人の約24%が「今後とも外国製自動車を購入する(n=12,268)」と回答している。

これは、「自動車の購入自体を考えていない(約35%)」という回答と、「購入時期を先延ばしにする(約32%)」といった回答の次に多い。また、「外国製自動車は買わない(約6%)」との回答や、「ロシア車を買わざるをえない(約2%)」といった回答を大きく上回っている。 そうはいっても、ロシア人消費者にとってロシア車は質が悪い割にアフターサービスが充実しておらず、唯一の利点であった低価格についても、部品価格の高騰などの影響で高価格化が進んでおり、現在は購入するメリットが少ないというのがロシア国民の一般的な評価なのである。

ロシア政府は外国製自動車の輸入関税の引き上げるなど、ロシア国内の自動車産業を保護する政策を行っているが、ロシアの国産車と外国製自動車との価格差はさほど大きくはない。例えばロシアでは、一般的な4ドアセダンの場合、自動車メーカーの希望小売価格を比較すると、ロシア国産車の ラーダ・カリーナが約25万ルーブル(約630,040円。100円=39.68ルーブル換算)であるのに対して、アメリカのシボレー・ラノスは約26万 4千ルーブル(約665,323円)、フランスのルノー・ローガンは約27万7千ルーブル(約698,085円)と、それ程大きな価格差はない。

日本車はこれらの外国製自動車に比べて、一般的に価格が高く設定されているが、他国車に追随を許さない。それは、充実したアフターサービス、燃費の良さ、無駄のない設計、故障の少なさといった日本車の高い品質がロシアでも極めて高く評価されているからだ。このため、できれば日本車を買いたい、というのがロシア人消費者の本音だろう。

ロシアにも日本と同じく、「安物買いの銭失い」といった意味の言い回しがある。ロシアにおいては、今後ももし自動車を買うならやはり外国製自動車、できれば日本車、という傾向は依然として変わりない。

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