クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート 第19弾 – バングラデッシュ 2009年7月23日

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クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート
第19弾 – バングラデッシュ 2009年7月23日

新興国19カ国レポートについて

本レポートは、海外調査や海外進出、海外出張などを検討しておられる企業様や、海外の政策や法律動向を見ておられる官公庁様、さらには学校法人様、現地事情にご関心のある個人の方に向けて執筆しております。

BRICsNEXT11VISTAなどのキーワードで取り上げられ、注目されている新興国のうち、インドネシア、中国、マレーシア、メキシコ、タイ、バングラデッシュ、南アフリカ、ロシア、ブラジル、ベトナム、韓国、フィリピンの19カ国を対象に、クロスインデックスの現地調査員の情報提供の下に配信してまいります。また、今後、アルゼンチン、UAE、エジプト、トルコ、インド、パキスタン、ナイジェリア、イランなどの国々を追加していく予定です。

掲載頻度としては、半月に一回、19カ国分のレポートの順次掲載を予定しております。国際ビジネスを展開される皆様のヒントになれば幸いです。

代表取締役社長 中村知滋

バングラデッシュで拡大するビューティービジネス

バングラデッシュ人民共和国People’s Republic of Bangladesh)においても、毎日朝刊に折り込み広告が1~2枚入ってくる。主に新しいお店のオープン告知やセールの宣伝などだが、バングラデッシュの首都ダッカDacca)では最近、”ビューティーパーラー”(美容院)のオープン広告が非常に目に付くようになってきた。また、ダッカの街中でも美容院の看板やバナー広告が増えてきている。

バングラデッシュにおける美容院の役割変化

バングラデッシュでは、これまでは美容院を日常的に利用する習慣がなく、また、美容院の認知度も低かった。このため、首都ダッカにおいてさえ1990年代に入っても、美容院は数える程しか存在しなかった。というのも、バングラデッシュにおける美容院は、そもそも結婚式を迎える女性が化粧をして着飾る場所であると同時に、花嫁の家族や親戚の女性達が髪を結う場所であったからだ。

ところが、バングラデッシュの首都ダッカを中心に、1990年代後半から美容院のビジネススタイルが大きく様変わりし、今では美白スキンケアやヘアトリートメント及びヘアカラーが主なサービス内容となっている。その理由は、バングラデッシュ国内で放送されている隣国インドのテレビ番組や、同じくインドや欧米から輸入されるファッション雑誌の影響が大きいと考えられる。人種的にも文化的に類以点が多いインドの流行は、時を移さずバングラデッシュでも取り入れられている。バングラデッシュの美容院でヘアカラーが主なサービスのひとつとなっている現状は、黒く長い髪が美人の条件の一つとされてきたバングラデッシュでは、大きな習慣の変化と言えよう。

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バングラデッシュの美容院では
結婚式のために腕にメンディをつける
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2~3時間後に
メンディが乾くと濃い色になる
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バングラデッシュの美容院で
ハーブ系美白中の女性
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美白後。
バングラデッシュではお見合いや結婚式前には
毎週の様に通う人が多い

バングラデッシュにおける美白信仰

バングラデッシュやインドにも、以前から美白信仰が存在していた。バングラデッシュでは昔から肌の色が白いことと髪が黒く長いことは結婚のための2大条件に挙げられているほどだ。バングラデッシュの女性は色白に見せるために、単純に肌を脱色(いわゆるブリーチ)するのだ。ブリーチには、化学薬品を使用しないハーブ系と速効性の高いアンモニア系の2種類がある。

ハーブ系のブリーチは、多くが美容院オーナーによる自家製で、成分には米糠(ぬか)やお米を粗く砕いた粉(米粉)、あるいは、日本でも馴染みの深い漢方薬のウコン(ターメリック)などが入っている。アンモニア系のブリーチは、バングラデッシュのスーパーマーケットや薬局等で購入でき、2回分使える程度の容量量で80タカ(約120円、1タカ=約1.5円)で販売されている。ちなみに、バングラデッシュの美容院では、顔の肌のブリーチあるいはハーブ系のブリーチを一回につき300タカ(約450円)程度で行うことができる。

バングラデッシュにおける肌のブリーチには、腕、足首、顔、首筋からうなじにかけた部分など、多くのボディーパーツごとにメニューが用意されている。つまり、バングラデッシュの女性が民族衣装のサリーを着た時に露出する部分を美白することを狙ったサービスメニューというわけだ。バングラデッシュの未婚の女性は時間とお金を掛けて、少しでも色白になるように日々努力している。

バングラデッシュの化粧品事情

写真のように、ウコンを肌に塗ると浅黒い肌がウコンの黄色成分によって和らぎ、さらには、脱色されて金色になった産毛が光に反射して、肌の色が薄くなったように見える。

他方、バングラデッシュのヘアトリートメントには多く、ペースト状の入れ墨で有名な植物メンディ(Mehndi)が使用されている。日本でもヘナ(Henna)トリートメントに使用されているメンディ(Mehndi)は、バングラデッシュではいたるところで見かける植物であり、枝ごとに束ねられて販売されている。これの小さな緑の葉を摘み、すりつぶしてペースト状にして使うのだ。頭につけると爽やかに熱を取って涼しくしてくれるため、バングラデッシュでは、風邪をひきやすい冬場には使用しない習慣となっている。

また最近では、バングラデッシュの 化粧品メーカーがパウダー状に加工したヘナ(Henna)を小さなパックに小分けして販売している。ロングヘアー用1回分の容量で僅か40タカ(約60 円)であり、ショートへアなら2回以上は使える。さらにこのヘナ(Henna)トリートメントは、髪につける時間によりヘアカラーとしても使用できる。黒 髪の人なら太陽の日射しで淡いオレンジ色に染まり、白髪ならばそのままオレンジ色に染まる。日本の美容院では1万円ほどで販売されているヘナ (Henna)トリートメントを、バングラデッシュ土産として買い求める日本人観光客もいる。

バングラデッシュには、この他にも、頭皮を丈夫にするトリートメント剤など数多くの伝統的な化粧品がある。これらはいずれも木の実などの植物を磨り潰しただけの自然由来の製品であることから、バングラデッシュは安価で購入できるが、バングラデッシュの伝統的な化粧品は未だ本格的には日本には輸出されていないようである。

美しさを追求するバングラデッシュの女性達~日本との違い~

バングラデッシュで は、肌や髪の手入れにお金を使えない貧しい家庭の女性でも、眉毛の手入れなどできる範囲でお金を掛けておしゃれを楽しんでいる。眉毛の手入れと言っても、 一般的な木綿糸を両手の指に捩りながら巻き付け、捩った糸を器用に動かしながら眉毛を糸に巻き付けて抜くといったもので、料金は20~50タカ (30~75円)程である。

日本における美容サービスは主に髪の手入れが中心だが、バングラデッシュでは長い髪への憧れが強い分、カットのニーズが少ない。その代わりに、トリートメントへのニーズは日本より遙かに多いが、そのため髪の毛を切る技術はさほど発達していない。

また、バングラデッシュの女性は結婚式やパーティーなどへ招待されると、髪を結いに美容院を利用する。美容院では、手足のネイルケアやフェイシャルマッサージ、サリーの着付けやパーティーメイク、手足につけるメンディ等々のサービスまで、バングラデッシュの美容院には日本の美容院では見られない多くのメニューが用意されている。

ちなみに、2001年にはバングラデッシュの富裕層や外国人が多く住む地域に「POLA」の看板が掲げられ、日本人の美容師が2人常勤し、バングラデッシュ人美容師を育てていた時期もあったが、その後日本人の美容師は帰国してしまい、残念ながらいつの間にか閉鎖されてしまった。

バングラデッシュで増加する外国人による美容院ビジネス

現在、バングラデッシュで流行の美容院の中には外国人が運営する美容院もあり、どの美容院も大盛況だ。その中でも最高級の美容院は、ロンドンで修行したパキスタン人が経営する美容院だと言われている。また、スリランカ人オーナーが経営する美容院は在バングラデッシュ各国大使館員のマダム御用達となっており、タイ人やフィリピン人がオーナーの美容院も大人気だ。最近では、アメリカでスキン・スペシャリストの学位を取得したというバングラデッシュ人の女性が2008年に美容院を開いている。

首都ダッカで美容院がこのように繁盛している理由は、何よりも美容院の絶対数が未だ少ないこともあるが、バングラデッシュには娯楽が極端に少ないため、美容院のように女性が安心して出かけられる場所が少ないことも一因だと思われる。休日の金曜日、土曜日にはいずれの美容院にも、行列が出来る程の人気なのである。そう言った意味でバングラデッシュの美容院は正に女性のオアシスとも言えるのだ。

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バングラデッシュの美容院で行う
眉や産毛の手入れ
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バングラデッシュ人女性の雇用機会拡大

バングラデッシュにおけるこのような社会環境の変化もあるが、バングラデッシュ人女性の雇用機会を増やす目的から、今では若手美容師を自ら育てる美容師も多く見られるようになった。バングラデッシュでは、未経験者は通常、美容院で見習いをしながら働くが、ベテラン美容師の自宅で多少の知識や経験を習得した後に、各美容院への就職斡旋を受けたり、あるいは、出張美容師として働きに出たりする場合もある。

バングラデッシュ社会では現実的には、美容院のオーナーでもない限り、まだまだ美容師の社会的地位は相当低い。しかし、雇用機会の少ないバングラデッシュに あって、女性だけの職場である安心から就職希望者は後を絶たず、少しでも有名でしかも高給が約束される美容院を目指す女性が多い。有名な美容院でも美容師 に支払われる給料は1ヶ月約3,000タカ(4,500円)程度ではあるが、経験を積み、固定客が多く付いた美容師になると1ヵ月の収入が1万タカ (約15,000円) 以上になる。バングラデッシュの美容院でもこの他の習慣は欧米同様で、顧客からサービス代としてチップ(約5~10%)を受け取り、それが美容師の収入の一部となっている。

 

美しさを追求するバングラデッシュの女性達と、廉価な人件費の割には多くの仕事をこなすバングラデッシュ美容師達は、今ではバングラデッシュの経済には無くてはならない存在だ。今後、女性をターゲットにしたバングラデッシュビューティービジネス市場は、更に成長する分野であることは間違いない。

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