クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート 第20弾 – 韓国 2009年7月23日

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クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート
第20弾 – 韓国 2009年7月23日

新興国19カ国レポートについて

本レポートは、海外調査や海外進出、海外出張などを検討しておられる企業様や、海外の政策や法律動向を見ておられる官公庁様、さらには学校法人様、現地事情にご関心のある個人の方に向けて執筆しております。

BRICsNEXT11VISTAなどのキーワードで取り上げられ、注目されている新興国のうち、インドネシア、中国、マレーシア、メキシコ、タイ、バングラデッシュ、南アフリカ、ロシア、ブラジル、ベトナム、韓国、フィリピンの19カ国を対象に、クロスインデックスの現地調査員の情報提供の下に配信してまいります。また、今後、アルゼンチン、UAE、エジプト、トルコ、インド、パキスタン、ナイジェリア、イランなどの国々を追加していく予定です。

掲載頻度としては、半月に一回、19カ国分のレポートの順次掲載を予定しております。国際ビジネスを展開される皆様のヒントになれば幸いです。

代表取締役社長 中村知滋

韓国人を魅了し始めた日本食市場

韓国人の「食べ物民族主義」

韓国South Korea)の食産業界内に占める日本食の比重は少し前まで極めて小さく、「日食」と呼ばれる日本料理の大部分は、刺身料理を食べさせる飲食店の専売特許だった。

韓国人にとって最大の喜びの一つは、「ウリナラ(わが国)」に生まれ、「ウリウムシク(わが飲食)」を食べられることであり、その象徴的な例として次のような韓国の自慢話がある。これは、少しでも韓国で暮らした経験のある人なら耳にたこが出来るほど聞かされた話だ。

それは、韓国人韓国料理を、単純この上ない「タックアン(タクワン)」のような日本の「漬物」と比べて自慢するものだ。韓国のキムチがいかに栄養に富み、手の込んだ、優れた発酵食品であるか、韓国の米も魚も醤油も味噌もいかにすばらしいか、韓国人にとって何から何まで「ウリナラでとれたものは世界で一番うまい!!」というものだ。このように濃厚な、韓国人の「食べ物民族主義」の中にあって日本食はこれまで、人前で堂々と食べるには少々気の引ける、ちょっと反民族的なにおいのする、胡散臭い食べ物としてマイナーな位置に甘んじてきたのだった。

韓国人の日本食に対する意識の変化

しかし近年、このような風潮にも少しずつ変化が見られるようになった。韓国人の嗜好を変えるのに決定的な役割を果たしたのは、2000年以降に驚くべき速度で勢いを伸ばした日本観光であった。

2007年の統計によれば、日本を訪れた韓国人は年間約260万人(2006年比伸率22.8%)と、200万人を大きく上回っている(2007年観光客、商用客、その他客を含む訪日韓国人総数。出典:日本政府観光局(JNTO))。韓国人の中でも、幼い頃から比較的規制の緩かった日本製アニメやドラマの洗礼を受けて育った20~30代の若い韓国人世代は、既成の韓国人世代に比べて日本に対する反発や警戒心がもともと希薄であった。そこへ加えて、その豊かな経済力を生かして直接日本を訪れ、見て、聞いて、体験することを通して、それまで韓国人の心の中で受けつがれてきた「観念としての日本の虚像」をあっと言う間に捨て去ってしまったのである。

まず、韓国における日本料理のうどんの出汁が従来の煮干から鰹節に変わり、ゴム草履のように薄っぺらでバリバリしていた「トンカス」がふんわりと厚みを持った日本風のジューシーな「トンカツ」に生まれ変わった。それと呼応するかのように、韓国人の舌は急速に日本食に慣れていったのである。

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韓国のとんかつ屋
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ソウルのラーメン屋

日本食 = マシイッソヨ!!(おいしい)

つい5年ほど前までは、日本旅行から戻ってきた韓国人大学生の10人に7、8人は、「日本は良かったけれど食べ物で苦労した」と感想を漏らしていた。それが最近では、「日本の食べ物が食べたいから日本へ行きたい」と言う韓国人大学生が増えてきている。韓国人には「油っぽくてあじけない」ともっぱら不評だった日本のラーメンが、「こんなに美味しいものはない」と絶賛されるほどの大きな変化を見せているのだ。それだけ、これまで「世界で一番美味しい」と韓国人の自慢だった「コチュカル(唐辛子粉)」で真っ赤に染まった激辛の韓国料理や、ツーンと鼻をつくほど強烈に発酵した韓国料理以外の「美味さ」を認められるほど、韓国人の味覚が肥えてきたといえるだろう。

ソウルなどの大都市では、20~30代の学生やサラリーマンを中心に、うどんやトンカツに続いて日本風のラーメン、カレーの専門店が人気を集めている。ソウルなどの大都市の大学街や会社の立ち並ぶ路地には「居酒屋」が暖簾を掲げ、大通り沿いの屋台では「コッチクイ」と呼ばれる串焼きが飛ぶように売れている。今や韓国で日本の食べ物は大きな文化アイコン、「韓流」ならぬ「日流」の代表的なアイテムとして急成長を続けているのである。

韓国においても本物の日本食を

現在、韓国にある大部分の日本食料理店はソウルプサンと言った大都市に集中しており、しかもそのほとんどが日本の味を真似た「カッチャ(にせもの)」である。ソウル市内では、本場日本の味を楽しめる店が少しずつ目に付くようになってきたものの、まだ「個人事業」の段階であり、日系大手資本のチェーン店はみられない。韓国の一流ホテルのレストランや料亭などが日本から板前を呼んで本格的な料理を出す店もあるが、現在の韓国ではこのようなケースは極めて稀だ。

しかし、今や日本食を味わいたいと言う欲求は韓国全土に広まっていると言っても良い。それは、韓国の地方の中小都市にも回転寿司がオープンし、夜ともなれば軽トラに赤提灯をつけたたこ焼きの屋台がアパート団地で拡声器を響かせている光景からも明らかであろう。

日本を訪れる韓国人の若者が現在の水準で増加し続ければ、日本食の本当の美味しさを理解する韓国人も増えつづけることになる。そうなれば韓国における日本食が、量の充足の次に求められるのは質の向上である。ここ韓国で日本食が味とサービスの質の点で競争力を増せば、「チンチャ(本物)」な日本食の前に、過渡期的「カッチャ(にせもの)」な日本食は淘汰されていくに違いない。世界的な経済不況の時代にあっても、韓国においては、韓国人の日本食への本物志向が、日系食品業界にとってマーケット・チャンスをもたらしてくれるかもしれない。

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韓国のたこ焼きの屋台

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