クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート 第36弾 – タイ 2011年1月7日

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クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート
第36弾 – タイ 2011年1月7日

新興国19カ国レポートについて

本レポートは、海外調査や海外進出、海外出張などを検討しておられる企業様や、海外の政策や法律動向を見ておられる官公庁様、さらには学校法人様、現地事情にご関心のある個人の方に向けて執筆しております。

BRICsNEXT11VISTAなどのキーワードで取り上げられ、注目されている新興国のうち、インドネシア、中国、マレーシア、メキシコ、タイ、バングラデッシュ、南アフリカ、ロシア、ブラジル、ベトナム、韓国、フィリピンの19カ国を対象に、クロスインデックスの現地調査員の情報提供の下に配信してまいります。また、今後、アルゼンチン、UAE、エジプト、トルコ、インド、パキスタン、ナイジェリア、イランなどの国々を追加していく予定です。

代表取締役社長 中村知滋

タイの日本食ブーム

タイThailand)は、1980年代後半以降に、年率平均9%の高度経済成長を記録し、現在では新興工業国としての地位を確立している。
2009年には、タイの国内総生産(GDP)は2,637億ドル、一人当たり国内総生産(GDP)は3,760ドルに達している(世界銀行調べ)。
国民一人一人の可処分所得も高まっており、タイは、輸出のための生産拠点としてだけではなく、市場としても重要性が高まっているといえる。
タイ人の節約を恥と考える国民性も、消費性向の高さにつながり、国内の消費に拍車をかけている。特にバンコクは、635万人の人口を抱えるタイで最大の都市である(なお2番目に人口が多いのはタイ東北部のナコーンラーチャシーマー市(Nakhon Ratchasima Province)の43万人で、日本人にも馴染みがあると言われているタイ北部のチェンマイ市(Chiang Mai Province)の人口は24万人である)。

タイ社会に定着した日本料理

こうした経済成長の中で、過去10年間に急速発展したのは、日本料理店だろう。
従来タイ人は食文化に関して非常に保守的で、10年ほど前には日本料理に関しても「食べられない」人が多かったが、近年ではそれが急速に変わりつつある。日本食の人気が高まっているのだ。
この日本食ブームの火付け役として、2つの日本食レストランの存在が挙げられる。
1つは、タイ人が経営する日本料理ビュッフェのチェーン店「オイシ」である。日本食のビュッフェを展開する「オイシ」の第1号店は、1999年9月に若者や富裕層の多いバンコクのトンロー通り(Thong Lo)にオープンした。同店はビュッフェ形式を採用する事で、日本食は料金の割りに量が少ないと言うイメージを打ち破り、「好きなものを好きなだけ食べたい」というタイ人の需要に応える事で圧倒的な支持を得た。今では、「オイシ」はタイにおける日本食の代名詞となっている。
もう一つは、日本人が経営する日本料理チェーン店の「富士」である。「オイシ」よりも創業は古く、2010年8月の時点で62の店舗を展開している。「富士」は、従来の日本料理よりも価格が安い上に、付き出しにあえてキムチをつけるなど、従来タイ人がイメージする日本料理に合った配慮が成功の要因だったと思われる。現在では、タイ日本料理といえば、まず「富士」を思い浮かべる、というほどの存在になっている。

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日本料理の激戦区 シーロム地区

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日本食チェーン店の大戸屋

日本のチェーン店の進出

ここ数年の間には、日本のレストラン・チェーン店の進出も相次いでおり、代表的な例としては、「大戸屋」、「モスバーガー」、「築地銀だこ」、「筑豊ラーメン山小屋」などが挙げられる。
この中で最も成功しているのは、「大戸屋」だろう。大戸屋は、タイの食品大手企業のベタグロ・グループとの共同事業により、2010年3月現在、20店舗を展開している。大戸屋の大きな特徴は、1.店舗数を急速に増やしていること、2.日本人シェフがすべての店舗に常駐しており、品質管理がしっかりしていることだ。同店は、タイ人の間での知名度もかなり高く、タイ人同士で「大戸屋に行こう」という会話をしている事がよくある。一方、他の日本食レストランは、まだ知名度浸透の過程にあるようで、「○○○に行こう」などとレストラン名を出しての会話はそれほど耳にしない。
タイで新規参入をして大きく成長することは非常に難しいことであり、「大戸屋」の成功はある意味驚くべきことであった。

日本食レストラン成功の要因

レストラン・チェーンの知名度は、タイで成功することにおいて非常に重要な要素になる。
タイ人には「大人数で行動することが多い」、「冒険はしない」という行動パターンがあり、大勢でレストランへ行く際には「多くの人が知っている」などの知名度が選定基準にあることもある。このため、タイの外食産業では寡占状態になりやすく、人気のある日本料理レストランは、「オイシ」や「富士」など少数に限られる。この様な傾向が見られる例として、タイのデパートでは、どこへ行っても同じチェーン店がテナントとして出店しているケースが多いことが挙げられる。

日本人向けの日本料理

タイには、上記で挙げた日本料理のチェーン店とは異なり、日本人を主な顧客とする日本料理店も存在する。
これらの店舗は、日本人が多い「シーロム(Silom)」や「スクンビット(Sukhumvit)」に集中している。
日本人のオーナーシェフが中心となって経営を行っており、本物の日本料理が味わえるということから、現地の日本人には人気が高い。特に、ランチタイムにはお得な価格のランチセットが提供されることが多く、現地の日本人には貴重な存在である。しかし、日本人を主な顧客とするため知名度が低く、タイ人の王族や政治家、高級官僚などから支持されている一部の高級店を除き、タイの市場にはほとんど入り込んでいないのが実状である。

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