クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート 第39弾 – ロシア 2011年5月12日

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クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート
第39弾 – ロシア 2011年5月12日

新興国19カ国レポートについて

本レポートは、海外調査や海外進出、海外出張などを検討しておられる企業様や、海外の政策や法律動向を見ておられる官公庁様、さらには学校法人様、現地事情にご関心のある個人の方に向けて執筆しております。

BRICsNEXT11VISTAなどのキーワードで取り上げられ、注目されている新興国のうち、インドネシア、中国、マレーシア、メキシコ、タイ、バングラデッシュ、南アフリカ、ロシア、ブラジル、ベトナム、韓国、フィリピンの19カ国を対象に、クロスインデックスの現地調査員の情報提供の下に配信してまいります。また、今後、アルゼンチン、UAE、エジプト、トルコ、インド、パキスタン、ナイジェリア、イランなどの国々を追加していく予定です。

代表取締役社長 中村知滋

まずは身近なところから ~ロシアに芽生える環境対策~

地下資源の豊富なロシア

国土世界一を誇るロシア(Russia)は広いだけではなく、その地底にはロシアの高度経済成長を支える豊富な地下資源が眠っている。2006年の天然ガスと石油採掘量は世界1位、その他に石炭や鋳鉄を含む複数の地下資源は世界5位以内の生産高を誇っている。

ロシアの輸出総額における鉱産物の割合は64.7%(2007年、金属と貴金属を除く)であり、地下資源ロシアの経済を大きく支えると共に、最近の天然ガス供給に関するウクライナとの問題にも代表されるように、ロシアの国際的な政治的立場にも影響を及ぼしている。この恵まれた環境の中、ロシアは見違えるような成長を遂げた訳であるが、一方で、現在の世界的な傾向である環境対策には、あまり積極的ではないことは日本でも報じられている通りである。

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建設中のモスクワ・シティ

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近年モスクワ市のあちこちに公衆トイレが
できたが地方ではまだ少ない

「バイオガス」による発電

2009年1月31日、モスクワMoscow)市南東部の下水処理場でロシア初となるミニ火力発電(Mini-TES)が稼動を始めた。開幕式典にはルシコフ市長も参列し大きく報道されたが、ロシア唯一であるこの発電の最大の特徴は、従来の一般的な発電原料とは異なる、「バイオガス(Biogaz)」を用いた発電である、という点である。

報道によると、下水の固形部分に1000℃の熱加工処理等を施して作るバイオガス発電力は、この下水処理場全体の50~70%の電力を供給するという。今のところ稼動は部分的であるが、将来的にフル稼働する際には、近隣の一般家庭やオフィスへの電力供給も考えている、とのことである。

環境問題への意識が芽生えるロシア

ロシアは2006年の電力生産が世界4位という、エネルギー大国である。しかし、報道等によれば、モスクワ市のエネルギーシステムは理想からは程遠い状態にあり、事故や故障が絶えず起こっている。さらに地方都市や農村地帯では、電力供給の不安定な地域や未だに電気の通っていない地域も珍しくなく、ロシアでは今後とも電力の需要は増え続ける一方である。

そのような状況下において、この「バイオ発電」による電力生産量は、ロシア全体どころか、モスクワ市の総電力からしても大海の一滴にも充たさず、おまけに採算性の低い事業であるという。それでも、このバイオ発電が大きく取り上げられた背景には、成長することだけを見据えてきた今までのロシアの開発姿勢とはやや異なり、近年ようやくロシアにも芽生え始めた環境問題への真剣な取り組といった姿が見られるからであろう。

一般市民の環境問題への意識

とは言え、もし一般市民に、少し値段の張るエコ対策商品と、安価な一般商品を選ばせたら、現段階では多くが安価なものを選ぶであろう。また、ロシア国民環境問題への関心の低さは、ある意味、国土の広さや資源の豊かさが一般の市民にとって誇りの1つであることの表れとも言えよう。

環境問題など小国の考えることで大国の国民である自分とは関係ない、と述べる者もおり、エコ対策に市民の目を向けさせることは、今後も容易ではないことが予想される。しかし、ここ数年で定額制だった水道や電話が使用量制になり、使い放題であった資源が、実は節約しなければいけないものである、という意識が国民にも出始めている。

先日、モスクワ市内のメイン通りにてゴミ分別の必要性を訴える運動があった。現在のところ、モスクワにゴミ分別のシステムはなく、この運動は環境保護と資源再利用のためのゴミ分別の必要性をアピールしたものである。近年、市内のいたるところに設置された「缶、ペットボトル回収機」は、空の飲料の缶やペットボトル1本で10~40コペイカ(約0.25~1円。100円=39.28ルーブル換算。1ルーブル=100コペイカ)が支払われることもあり、手軽に使われている。まずは身近なところからの第一歩、ということであろうか。

店に置かれる商品にも最近になって電気代節約をうたったものが見られるようになった。例えば、毎日の紅茶やコーヒーに欠かせない湯沸しポットであるが、以前の売れ筋は「いかに早く沸かせるか」であり1000W以上の大容量の電力を要するものが主流であった。それが近年、日本でよく見かける保温も兼ねたジャーが店頭に増えてきている。パナソニックの製品の一例(3300ルーブル。約8401円)であれば、保温時25~51W、最大700Wという電力節約を掲げている。

一方で、冷蔵庫やエアコンなどその他の家電で省エネをうたったものは、今の段階でもほとんど見かけない。ロシア環境対策に目を向け始めているため、今後、省エネ、エコ対策製品の需要は増えるであろう。今こそ、エコ対策の先進国である日本の製品や技術が、ロシアで必要とされてくるのではないだろうか。

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ペットボトル回収機

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