クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート 第46弾 – ロシア 2011年7月12日

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クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート
第46弾 – ロシア 2011年7月12日

新興国19カ国レポートについて

本レポートは、海外調査や海外進出、海外出張などを検討しておられる企業様や、海外の政策や法律動向を見ておられる官公庁様、さらには学校法人様、現地事情にご関心のある個人の方に向けて執筆しております。

BRICsNEXT11VISTAなどのキーワードで取り上げられ、注目されている新興国のうち、インドネシア、中国、マレーシア、メキシコ、タイ、バングラデッシュ、南アフリカ、ロシア、ブラジル、ベトナム、韓国、フィリピンの19カ国を対象に、クロスインデックスの現地調査員の情報提供の下に配信してまいります。また、今後、アルゼンチン、UAE、エジプト、トルコ、インド、パキスタン、ナイジェリア、イランなどの国々を追加していく予定です。

代表取締役社長 中村知滋

贈り物 ~ロシアの大切な習慣~

ロシア最大の祝日 「新年」

ロシア連邦Russian Federation)は100以上の民族、11の時間帯が、世界一の国土面積に広がる巨大な国で、それだけに、すべての国民が一丸となる祝い事は日本に比べ多くない。このようなロシアにおいて、比較的多数の国民が祝うものは新年であろう。

ロシアでは1月7日がクリスマスであるが、ツリーを飾るのも、サンタクロース(ロシアではデッド・マローズ)がやってくるのもクリスマスではなく、新年である。この日のためにロシア人は贈り物や客用の食卓の準備をする。昨年10月のデロイト(Deloitte)の調査によると、2009年の新年ロシア人1人あたり537ユーロ(約71546円。当時のレートで1ユーロ=35.20ルーブル、100円=26.42ルーブル換算)の予算を見込んでいる、とのことであった。この内訳は贈り物に300ユーロ(約39970円)、食料に143ユーロ(約19052円)、娯楽に94ユーロ(約12524円)で、費用総額はヨーロッパ各国およびトルコ、南アフリカなどを加えた約20カ国中9位を占める。

西ヨーロッパ諸国が経済不況により軒並み縮小傾向であるのに比べ、ロシアの場合、贈り物は前年より16.3%、食料は10.5%、全体で5.6%上昇と、不況の影響がロシアは他国より遅れたとはいえ、大幅な増大傾向であることには変わらない。総費用の半額以上を占める贈り物であるが、香水化粧品類や菓子類や酒類、もしくは干支にちなんだ小物を贈る人が多い。味、質ともに定評のあるコルクノフ(Korkunov)の新年パッケージ入りのチョコレートや、近年流行のウォッカ、ゼリョーナヤ・マルカ(Zelyonaya marka)はどちらも130ルーブル前後(約367円。現在のレート100円=35.41ルーブル換算)である。もちろん身近な人には、食品ならばフランスワインなどの輸入もの、もしくは電化製品、装飾品など値の張るものを贈ることもある。

日本人から見ると、あらゆる知り合いに贈り物をし、連日豪華な食事の準備をするロシア人新年にかける情熱には、正直なところ驚いてしまう。

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ウォッカ
新年パッケージのチョコレート
干支の絵のついたタオル

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モスクワ市内南西部
メトロ駅前
婦人の日に向け
臨時で設置された花屋

3月8日「婦人の日」

華やかな「プレゼント交換」が行われるのは新年に限ったことではない。新年の次にやってくる大きなプレゼント購入の機会は、3月8日の「婦人の日」である。

婦人の日はその名の通り女性のための祝日で、女性に贈り物をする。伝統的にミモザの花を贈ったが、現在はバラ、チューリップなどが一般的で、知り合いの女性にはもちろん、すべての女性社員に花を配る企業も少なくない。通常チューリップはモスクワMoscow)中心部の花屋で1本60ルーブル程度(約169円)から、バラは100ルーブル程度(約282円)からであるが、この日の花の価格は1.5~2倍以上に値上がりする。さらに偶数の花を贈ることは縁起が悪いので避けられるため、奇数の花による束となる。

例えば、好まれる真紅のバラ3本の束は通常価格で最低360ルーブル(約1017円)はするため、当日購入するには、1.5~2倍の値上がり幅であれば一束540~720ルーブル(約1525~2033円)を見込むことになる。もし綺麗にアレンジされた花束であれば通常価格でも1500ルーブル(約4236円)は下らない。

しかし、この花を贈る習慣は、この経済不況の中、本年もしっかりと行われた。花は輸入物も多く、最近チューリップは日本からも輸入されていると聞く。以前の、種類が少なくあまり選びようのなかった花屋に比べ、近年は種類が増え、色鮮やかになった。

贈り物の日

その他、モスクワに住む限り逃れられない代表的な「贈り物の日」は誕生日である。ロシアでは、どれだけ年を取っても誕生日会を開く人が珍しくない。招待客は当然プレゼントを持って参上する。会に呼ばれなくても、会う予定があればプレゼントを渡したりもする。誕生日会では花や食品だけということは少なく、何らかの「物」を購入するケースが多い。

その他に「贈り物の日」として考えられるのは、教育機関における年度末(5月末から6月)と年度初め(9月1日)で、先生に贈り物をする。日本の教育機関での先生への贈り物はご法度なようだが、ロシアでは逆に必須なもので、内容は花、菓子類、嗜好品が多い。ちなみに先生への新年婦人の日贈り物も広く行われている。

その他、2月23日の「祖国防衛者の日」はあまり一般的ではないが男性に贈り物をする日、また近年知られるようになった恋人の日「バレンタイン」は、将来「贈り物の日」と定着させるべく、若者向けアピールに企業はかなり力を入れている。

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モスクワ市内中心部
メインストリート
常時並ぶ花屋

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プレゼント用包装を行う店
一般店でプレゼント用包装は行わない
包装は決して安くない

贈る人、贈られる人

これら「贈り物の日」は決して富裕層などの金銭に余裕のある人だけの行事ではない。生活に余裕のない人は、この行事の際に資金不足にならないように家計をやりくりする。

統計によるとロシア全体の2008年7~9月の平均月収は15838ルーブル(約70391円。当時のレート100円=22.50ルーブル換算)であった。その翌10月に月収の半額以上にあたる300ユーロ(約39970円)を新年の贈り物用に見積もるロシア人にとって「贈り物の日」がどれだけ大切な行事なのか、うかがい知れよう。不況の中、表面的には例年と変わらず花の舞った本年3月8日を見ても、贈り物をやめることの難しいことが伝わってくる。

ロシア人は贈り物には金を惜しまない。しかし贈り物に、電化製品やチューリップを除いて、日本の製品が顔を出すことは少ない。花や菓子から宝飾品にいたる幅広い出費額と、頻繁かつ大規模な出費機会を持つ、このロシアの贈り物文化に、同様に贈り物を大切にする日本から、もっと多くの企業が参入することが可能ではないだろうか。

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