クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート 第54弾 – ロシア 2011年8月30日

BRICs、NEXT11、VISTA等新興国19カ国 現地ビジネスレポートの定期購読申し込み(無料)はコチラ

philippines

クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート
第54弾 – ロシア 2011年8月30日

新興国19カ国レポートについて

本レポートは、海外調査や海外進出、海外出張などを検討しておられる企業様や、海外の政策や法律動向を見ておられる官公庁様、さらには学校法人様、現地事情にご関心のある個人の方に向けて執筆しております。

BRICsNEXT11VISTAなどのキーワードで取り上げられ、注目されている新興国のうち、インドネシア、中国、マレーシア、メキシコ、タイ、バングラデッシュ、南アフリカ、ロシア、ブラジル、ベトナム、韓国、フィリピンの19カ国を対象に、クロスインデックスの現地調査員の情報提供の下に配信してまいります。また、今後、アルゼンチン、UAE、エジプト、トルコ、インド、パキスタン、ナイジェリア、イランなどの国々を追加していく予定です。

代表取締役社長 中村知滋

長寿をめざして ~ロシア人の健康食品への関心の高まり~

ロシア国民の平均寿命

人口約1億4千万人(2008年1月)を擁するロシア連邦(Russian Federation)における、国民平均寿命は66,6歳(2006年)と、西側先進諸国と比較すると、やや見劣りのする数字である。特に、女性が73,2歳であるのに対し男性の60,4歳というのは、他国の平均寿命を聞くにつけ、ロシア人にとって軽視できない数値であろう。

ロシア人と言えば、故エリツィン大統領に代表されるように、酒飲みのイメージが外国人にはある。確かに40度のウォッカをショットグラスから一気に飲み干すロシア人の姿は、一度見たら忘れられないことと思う。これがロシア人寿命に影響を直に及ぼしているという見方は確かにできよう。しかし、世界保健機構が2003年に出した統計では、ロシアのアルコール摂取量は22位(10,3リットル)であり、ルクセンブルク(2位、15,6リットル)、アイルランド(3位、13,7リットル)、他ドイツ(8位)、イギリス(9位)など西側先進諸国の多くが上位をつける中、控えめな結果となっている。

ゴルバチョフ政権時に禁酒令に類したものがあり失敗に終わったそうだが、アルコールだけにこの責任を押し付けるのは、やめたほうが良さそうであることは、実際の統計からも伺い知ることができよう。概して日本人と比較すると、ロシア人健康全般に対する意識は低いように思われる。

russia
スーパーの棚に並ぶ高級ウォッカ

russia
メトロ駅構内にある
巨大なタバコ広告

遅れている健康意識

ロシア人は決して健康に無関心なわけではない。風邪の際に化学医薬品にたよらず自然のもの(ラズベリーの葉を煎じて飲むなど)を好む人や、夏場は都市部での喧騒を逃れ、郊外へ出かけて畑仕事をする人も多い。温泉やサナトリウムも古くから好まれている。しかし、実際のところ、例えばロシアではタバコに対し、今でも西側先進諸国に比べかなり寛容である。空港を含む、公共の場でのタバコの規制は始まってからまだ短い。

ロシア国産車のエアバックに代表される安全装備の標準化も完全に遅れをとっている。食品や化粧品で言えば、添加物などの表記があいまいだったり、また、各地の「健康に良い」と言われている自然の水が、科学的検証の結果汚染されていることが判明したり、増え続ける車などの影響による大気の汚染なども問題となっている。身近な日々の食生活で見れば、日本のような「1日最低何品目を摂取しましょう」といったキャッチフレーズは、一般に聞いたことがない。

このようなロシアで最近、健康への意識が急速に高まってきた。ロシアにおける、大規模かつ予想外の長期に渡る日本食ブームの理由に「長寿国日本の食生活を見習いたい」ということをあげるロシア人が多い。肉を中心としてきた食事から、海産物の需要が近年増えている。野菜や果物の重要性も見直されつつある。薬局では近年、「自然派」をうたった独自の製品を売り出し始めたところもある。

モスクワMoscow)市内にはフィットネスクラブが多数開き、ロシアのオリンピックチーム公式デザインを担当するBoscoのおしゃれなスポーツウェアも、例えば襟のついたTシャツが6000ルーブル程度(約17376円。100円=34,53ルーブル換算)、ウインドブレーカーであれば10000ルーブル(約28960円)を軽く超える富裕層がターゲットかと思えるような高価格の割に、店舗を着実に増やしていることから見る限り、一般にも販売を伸ばしているようである。

一方で、地方紙は食品添加物について定期的に取り上げたり、「健康に良い」と信じられてきた湧き水が、実際には健康に良いどころか飲料水としての基準すら満たしていないことが報道されたりと、科学的根拠に基づいた「健康」への啓蒙活動もさかんに行われている。健康とは何か、何が健康に良いのか、何をすべきなのか、多くのロシア人が今、大きな関心を寄せている。

広まりつつある「健康に良い」もの

本年2月に行われた、1000以上もの企業が参加するロシア最大の食品エキスポ(ProdExpo)では、「健康食品」というカテゴリーで参加する企業もあった。その数は冊子上で17社とまだ多くはないが、すべてロシアの企業である。このカテゴリーには、オーガニック、バイオという言葉が使われ、この言葉自体のより広い普及も兼ねているように思える。ロシア人は今、真剣に健康について考え始めている。

ロシア中に広まる日本食、前プーチン大統領も入れ込む柔道に代表される日本の格闘技など、広く報道されているものだけではなく、日本への渡航を経験した中には洗い場と分かれている風呂、洗浄機能などのついた高性能なトイレ、新鮮な食材、お手拭に代表される清潔さなどに驚嘆して帰ってくるロシア人も多い。世界を代表する長寿の国、日本からあらゆる分野での長寿の秘訣を学ぼうという姿勢が感じられる。ロシア人健康に、日本の秘訣が今、必要とされている。

russia
蜂蜜市場
蜂蜜は健康に良いと古くから愛用され
産地などにこだわりのあるロシア人も多い

ロシアへの進出支援、販路開拓、市場調査、ロシア人アンケート調査ロシア語翻訳・通訳のお問合せはこちらまで


ページの先頭へ