クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート 第64弾 – ブラジル 2012年02月28日

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クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート
第64弾 – ブラジル 2012年02月28日

新興国19カ国レポートについて

海外調査や海外進出、海外出張などを検討しておられる企業の方々を対象に、クロスインデックスの現地調査員からの情報を元に掲載しております。
BRICsNEXT11VISTAなどのキーワードで取り上げられ、注目されている新興国のうち、中国、韓国、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシア、インド、バングラデッシュ、パキスタン、ロシア、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、UAE、エジプト、トルコ、南アフリカ、ナイジェリアなどの国々を対象としております。(国別レポート一覧はこちら

2012年のブラジル経済

ブラジル史上初めて女性大統領として就任し、一年が経過したジウマ・ルセフ(Dilma Rousseff)大統領の評判は、概ね良好だ。就任当事、前ルラ(Lura)大統領のカリスマ性と比較すると、その手腕が疑問視されたジウマ大統領であったが、経済成長路線を維持しつつ、所得格差の是正、クリーンな政治に正面から取り組む姿勢に、国民の評価は高い。特に、前大統領や連立野党とのしがらみで就任した汚職容疑の大臣を、半年の間に6人も罷免した決断力を、国民は高く評価している。

ジウマ政権

政治的には大きな波乱は起らないと見られるジウマ政権も、経済面では、幾つかの不安要素を抱えている。国内的には、過去数年の間に、貧困層から中間層に移動したと言われる五千万人が根強い購買力を維持しており、昨年の後半に、インフレや景気後退の兆候が出た際には、矢継ぎ早に打った需要喚起策(金利引き下げ、最低給与の引き上げ、白物家電工業製品税の引き下げ等)が奏功し、今後も旺盛な国内需要は維持されると見られている。

また、プレ・サルと呼ばれる超深海油田、バイオエタノール、アグロ・ビジネス、インフラ整備計画「PAC2」などの大型国家プロジェクトが何れも着実に動き出している事に加え、2014年のサッカー・ワールドカップ大会、2016年のリオ・デ・ジャネイロ・オリンピック関連のインフラ工事の追い風もあり、概して順調な経済推移が予想される。一方、懸念されるのが、欧州債務危機問題のブラジルへの波及である。

ブラジルの大手企業100社の内、49社が外資系企業であり、しかもその大半が欧州系の企業である事から、欧州本社の業績悪化に伴うブラジルへの直接投資の減退、また、欧州系銀行の融資が滞る状況が発生すれば、ブラジルでの事業展開への悪影響が心配される。もう一つの懸念は、欧州危機が中国へ飛び火して、中国経済が減速し、ブラジルから中国へのコモディティー商品(大豆、トウモロコシ、鶏肉など)の輸出が大幅に落ち込む事になるからである。

いずれにしても、2012年のブラジル経済見通しに対し、経済学者の間でも、『現状維持か好転する』が6割、『悪化する』が4割と分かれており、経済成長率予測も、最悪マイナス0.7%から、プラス3.5%までの振れ幅があって、正に、予断を許さない状況にある。

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2011年末に発行された経済紙『EPOCA』の『ブラジルを代表する経営者による2012年景気見通し』より、
金融会社と建設関係の社長談話の要約をご紹介する。

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ブラジル大手銀行Bradesco社長: Luiz Carlos Trabuco Cappi氏

『2012年のブラジル経済は、グローバル経済危機による制約をある程度は受けるものの、堅調を維持する。ブラジル経済は、1.実態に即した経済政策、2.活発な社会動態、3.大型インフラ事業、の三本柱によるマクロ経済に支えられており、外的要因に対する抵抗力を十分備えているし、これらを支える金融財政政策もしっかりしている。さらに、諸外国からの投資は活発で、産業の活性化と雇用の増大に貢献している。好調な輸出も持続すると見る。

世界経済の停滞は、輸出品の在庫調整を余儀なくするだろうが、深刻な事態には至らないと見る。ブラジル金融界は、ブラジルの成長を支えて行く十分な資金を保持している。ブラジル中銀民間銀行の厳しい監視の元で、過剰貸し出しも発生していない。懸念すべきは、外的要因によるリスクである。例えば、外資投資、外銀融資の先細り、中国経済の急激な減速等のリスクだが、起りえないとは限らない。

いずれにせよ、ブラジル銀行は、中央銀行に強制預託金として、4000億レアル(1レアル=45円)の資金を積み上げており、健全な状態にある。現在の様な状況下で大切なのは、謙虚さと慎重さである。現在の良好な状態に至るまでに経験してきた数々の苦い経験を、絶対に忘れてはいけない。金利は下がったし、インフレもコントロール下にあり、大衆の生活向上意識は旺盛だし、今が飛躍のチャンスと見る。』

ブラジル大手建設会社GERDAU, Andre’ Gerdau社長

世界経済が不安定な中、ブラジルでは成長が期待できる。当社は、14年のサッカー・ワールドカップ大会用の球場建設、鉄道、風力発電所、港、道路、国策持ち家制度による住宅建設事業などに、積極的に取り組んでいる。ブラジル鉄鋼協会の予測では、2012年の鉄鋼生産は前年比12%増の3000万トンに達すると見られており、建設を始めとする産業界の活動は活発である。

当社の海外事業は、その大半が経済活動が活発な途上国での仕事の為に、不安定な世界経済の悪影響は、現在の所受けていない。但し、ブラジルを始めとする中南米全体の金属機械産業の後退を心配している。ラテンアメリカ鉄鋼協会(Alacero)のデータによると、ラテンアメリカ諸国と中国との金属機械の取引は、2010年度、575億ドルの輸入超過となっている。(2005年は174億ドル)

ブラジルにおいても、強すぎる通貨レアル、下がったとは言え国際水準から見れば高すぎる金利、高い各種税金などの構造的要因で、輸出競争力の低下は深刻な状況に陥っている。持続的なブラジル、並びに、ラテンアメリカの産業発展を妨げるこれらの障害を、長期的視野に立って、解決して行かなければならない。

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