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高まる良質な長距離バスの需要
数少ないながら良質のサービスを提供するバス会社もある。車両は安定感のある1階建であり、安全運転が心がけられている。他のバス会社に比べると料金が30~50%ほど割高だが、タイ人にも大人気で、チケットも前もって予約しないと手に入らない。外国人や所得のあるタイ人もバスを使わざるを得ない事情ゆえ、割高でも安全なバスに流れるのは自然なことだろう。それでも安全が後回しにされるタイの市場では、まだまだこうした良心的な事業を展開しようという事業者は少ない。因みに一回のバス運行における収益の試算をしてみると次のようになる。ドル箱のバンコク~チェンマイ間、距離は約600㎞、運賃は約900バーツ(VIP)と仮定する。運賃収入は36,000バーツ。ディーゼル燃料費が約4,700バーツ(燃費4㎞/ℓ、ディーゼル費31バーツ/ℓ)、ドライバーと添乗員1名の人件費が800バーツ、軽食、水、食事券などが約1,500バーツで、経費の合計は7,000バーツとなる。法人税30%を差し引くと、単純粗利は1回の運行当たり20,300バーツである。勿論毎日走るので、一カ月の利益は610,000バーツ(約160万円)となる。
3年後の2015年にはASEAN自由輸送が解禁になり、近隣諸国からの旅行客が増加すると見込まれている。鉄道網の新規構築プランがゼロに近い現状では、長距離バスの需要は一層高まるだろう。日本の企業が、安全な輸送サービスをタイの長距離バス事業に移転するなら今がチャンスである。外国人事業法に則った出資比率でタイ企業と共同事業を興すなら、参入は難しくない。タイに住む外国人の一人として、安全と安心を提供してくれるバス会社の登場を一にも早く望む。
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