クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート 第97弾 – タイ 2013年06月14日

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クロスインデックス現地調査員による新興国19カ国レポート
第97弾 – タイ 2013年06月14日

新興国19カ国レポートについて

海外調査や海外進出、海外出張などを検討しておられる企業の方々を対象に、クロスインデックスの現地調査員からの情報を元に掲載しております。
BRICsNEXT11VISTAなどのキーワードで取り上げられ、注目されている新興国のうち、中国、韓国、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシア、インド、バングラデッシュ、パキスタン、ロシア、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、UAE、エジプト、トルコ、南アフリカ、ナイジェリアなどの国々を対象としております。(国別レポート一覧はこちら

拡大するタイのクレジットカード市場

タイクレジットカード発行枚数は、2013年1月時点で約1,703万枚(銀行:835万、ノンバンク:867万枚)である。同月の取引総額は1,231億バーツであり、クレジットカード保有者の平均利用額は、約7,200バーツ(2013年1月)ということになる。前年同期と比較して見ると、2012年1月の保有枚数は1,526万枚(11.6%増)、平均利用額は6,822バーツ(5.5%増)となり、枚数および利用額のいずれも増加傾向にある。要因としては中間富裕層の拡大が主として挙げられる。平均的な中間富裕層の平均月収は約26,000バーツ、平均世帯収入は70,800バーツであり、世帯人数は約3.9人と核家族の形態に限りなく近い。中心年齢は39歳である。このセグメントがタイの市場活性の中心的役割を担っており、クレジットカードの発行数、利用額を牽引していると言える。因みに2012年のGDPは11兆3,600バーツ(3,918億ドル、34兆円)であり、一人当たり換算で16万7,100バーツ(5,761ドル、501,300円)となる。

ノンバンク市場をリードするKTC

タイのイシュア(クレジットカード発行企業)は銀行系とノンバンク系が拮抗している。ノンバンク系イシュアは淘汰されており、10年前には12社だったのが現在では約5社に集約されている。そのうちノンバンクの市場をリードするのはKrungthai Card(KTC)社である。発行枚数は約200万枚(市場シェア23%)で、親会社の政府系銀行Krungthai Bankが発行済み株式の49.5%を保有する。政府系への信頼が厚いタイでは、KTCへの信頼も同様に厚い。タイの主要マーケティング誌「Marketeer」最新版にKTC代表取締役社長Rathiyan氏のインタビュー記事が掲載された。同記事によると現在、タイの平均クレジットカード保有枚数は3枚であり、自社のカードを優先的に利用してもらうことが課題となっているようだ。イシュアの多くは短期利益率の高い価格面でのプロモーションを打ち出しているが、KTCではリワードを強調するキャンペーンに注力していくとのことである。加えてカード提携企業(アライアンス)の拡大も重要戦略の一つであり、消費者の多い外食産業、例えばミスタードーナツやマクドナルドとの提携もKTCカードの魅力を高めるポイントになっている。最近ではJCBとも提携し、日本国内でのKTCカード利用普及促進を目指す。

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クレジットカード市場の行方

現在タイにおけるノンバンク日系イシュアはイオンタナサップ社の一社のみである。イシュア業はタイ中央銀行のカテゴリでは電子決済サービス事業に属し、情報通信技術省電子取引委員会の考慮を経てタイ中央銀行が承認し、事業認可を出す。同業種は外国人事業法の規制を受けるが、決済事業認可の手続き自体は書類審査が主で困難ではない。日系イシュアのタイ市場進出のキーポイントは、当然ながら収益面からみた事前調査になるだろう。現在のクレジットカード保有者のほとんどはバンコクや地方の数都市に住む消費者に限られている。それ以外の約4,000万人以上を占める地方の消費ポテンシャルを正確に予測することができれば、クレジットカードの新市場を拡大する好機になるに違いない。尚、タイの決済システムには「クレジットネットワーク業」というカテゴリがあるが、現時点で認可を受けている企業はない。これはイシュアとアクワイアラ(加盟店管理・決済代行会社)との間で限度額や決済額などの電子データを取り扱う業務を主とする事業である。タイではイシュア業とアクワイアラ業を同一企業が行なっているため、現時点で「クレジットネットワーク業」のニーズがないと思われるが、タイ中央銀行が敢えて現在の決済システムに同事業を含めているのは、他国に対するリサーチから発生した将来への備えなのかも知れない。この点は将来のビジネストピックの中で取り上げてみたいと思う。

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